不妊症の目安は結婚して1年
通常の夫婦生活を営んで一年を経過しても子供のできない状態を不妊症といいます。
一般的には避妊をしないで夫婦生活を営んでいる場合、全体の80パーセントは1年以内に妊娠するといわれ、2年以内であればその数は90%に達します。
近年、不妊症のカップルは増加傾向にあり、国立社会保障・人口問題研究所が実施した「第15回出生動向調査(2015年)」 によれば2010年のデータでは6組に1組が不妊に悩んでいるということです。
原因は晩婚化、ライフスタイルの変化などです。
働ぎすぎ、ストレス過多や食生活の偏りがあげられ、それにともなってセックスレス、栄養不足、体調の乱れが慢性化し妊娠しにくい状況をつくりあげています。
日本の不妊治療出生率
日本は不妊治療を受けている患者数が世界で一番多いのにかかわらず、その治療による出生率は一番低いのをご存知でしょうか。
国際生殖補助監視委員会の調査(2016年)によると日本の生殖補助医療の実施件数は60か国中で1位だったのに変わらず、出生率は最下位の6.2%でした。
「日本で標準的に実施されている不妊治療がはたして万人におすすめできる治療なのか」考えさせられる結果です。
不妊症の原因はわかりにくい
一般の病気には痛みや発熱など何かしら具体的な症状が見られます。そのため、西洋医学的では診断がつきやすく治療方針も立てやすいのです。
しかし、不妊症は他の病気とは異なります。痛みや不快な症状もなく、検査も限られているため原因の特定は難しいのです。男女ともに検査をしても異常がないのに妊娠に至らない場合もたくさんあります。
多くの方は妊娠できない原因は何なのか、何が悪いのかを気にします。しかし、原因はほとんどの場合わかりませんし、分かったとしても特効薬があるわけではありません。
現代の医学(西洋医学)を持ってしてもわからないことだらけなのです。
男女ともに不妊につながる原因をもっている
日本では古くから不妊は女性側の問題であるとされてきました。
妊娠できないことが原因で女性は肩身の狭い思いをしてきたり、離婚問題に発展することさえありました。
ある調査によると、女性だけに原因がある場合は41%、男性だけに原因がある場合24%、男女共にある場合24%でした。つまり男性に原因がある不妊症の割合は48%になります。
不妊症原因の半数程度は男性側に原因があるのです。
女性の不妊症の原因
- 卵巣:卵巣機能不全
- 子宮:子宮内膜症、子宮筋腫、発育不全、子宮の奇形
- 卵管:狭窄、癒着、閉塞、水腫、
- ホルモン分泌不全
- その他
男性の不妊症の原因
通常は十分な量の精子が毎日作られます。膣の中へ放出された精子が良い状態で子宮を通り、卵管までたどり着いて卵子と結びつき、受精にいたります。男性不妊症の場合、精子の数や運動率が不足していたり、性機能障害などによって膣の中へ十分な精子を送り届けることができない場合があり、この過程が成立しないのです。
原因としてはストレス、喫煙、アルコール、肥満、精巣の機能障害、精子の産生・射精に関連するトラブル、停留精巣、精索捻転、精巣上体炎、糖尿病、性感染症などがあげらます。また薬物による影響もあり、抗がん剤、抗うつ剤、抗不安薬、精神病治療薬、抗男性ホルモン作用のある胃薬などがあげられます。
造精機能障害
- 無精子症:精子が確認できない。
- 乏精子症:精子が少ない
- 精子無力症:精子の動きが悪い
精索静脈瘤
精索静脈瘤とは精巣周辺の陰嚢にできた静脈瘤(静脈が怒張してできたこぶ)のことで、精巣静脈が逆流するため精巣周囲にに血液が留まり精巣内の温度が上がる疾患です。一般男性の6人に1人に認められています。
精子の運動率が低下したり精子数が減少したりするため、不妊の原因になります。精子の運動率低下、乏精子症の男性のうち10人に4人は精索静脈瘤が原因とされています。
また、精索静脈瘤は徐々に精巣機能を低下させてしまうこともあります。
二人目不妊のカップル10組のうち8人が精索静脈瘤が原因という調査結果もあります。一人目が自然にできたからといって男性側には異常はないとは言い切れないのです。
その他の原因
- 膿精液症:精液が菌に感染している
- 精機能障害:夫婦生活時にペニスが勃起しない
- 射精障害:膣内で射精する事ができない
男性不妊への鍼灸治療
男性も「妊娠させやすい身体づくり」を目指していく必要があります。
造精機能はデリケートです。ストレスが大きければ造精機能も影響を受け、精子の運動率の低下や、乏精子症の原因となります。
当院では、病院で精索静脈瘤と診断された方へ鍼灸治療した結果、造精機能障害が改善し自然妊娠できた例もあります。
乏精子症や精子無力症、インポテンツなどの性機能障害は鍼灸治療により改善が期待できます。
不育症の多くは原因不明
2回以上流産(死産や新生児死亡)を繰り返した場合は不育症と定義されます。
病気と関連が疑われる要素のうち3割程度は原因が特定されています(子宮の形態、血液凝固系、自己免疫、夫婦の染色体異常など)。
一方でその7割程度は原因は不明とされています。
東洋医学的における不妊症、不育症の考え方
原因が特定できていれば、薬を使った治療が可能な場合もありますが、7割程度は原因が特定できませんから、治療方法も確立されていないのが実状です。
西洋医学的に原因がはっきりとわからないことは治療する手立てがないので、体外受精へ踏み切る一つの理由になっています。
一方、東洋医学的な視点で観察すると「身体が妊娠を維持できる状態になっていない」ため妊娠に至らない状態ということが見えてきます。
畑に例えれば、土壌が良くないのです。その場合はある程度時間をかけて土を耕し、必要があれば栄養を与え、しっかり土壌を整えてから野菜の種を植えなくてはなりません。
まずは「妊娠しやすい身体づくり」をしていく必要があります。